心臓血管外科について
当科では生まれながらに心臓病があり外科治療が必要な方や、子供の時に心臓手術を受け大きくなった方を対象に治療を行なっています。
小児心臓手術には様々な難易度の手術がありますが、当科は最高難易度の手術(日本小児循環器学会主導で手術難易度分類を行い最も難易度の高いとされるAdvanced3の手術)を行える北海道唯一の施設となっています。
また最大の特色は下記にもありますようにMICS手術です。病気を持ち手術を受けなくてはならない患児がその後の成長過程において創部を抱え続ける精神的負担を軽減するために日々努力しています。
診療体制について
常勤医師3名(心臓血管外科専門医2名)、 臨床工学技士5名に加え北海道大学病院より週1回、神奈川県立子ども病院より週1回の手術応援の下、月曜・水曜・金曜の週3回の手術を行なっています。
特色
①低侵襲手術の積極的導入
ⅰ)ASD/VSDに対するM I C S手術:心房中隔欠損症(ASD)/心室中隔欠損症(VSD)は先天性心疾患の中で多くの割合を占める疾患でカテーテル治療が行えない患者様には手術が必要となります。当科では胸骨を切らず創部が目立たない右後側方切開アプローチでの手術を行っています。術後遠隔期に於いて創部の満足度、日常生活での機能について調査し良好な結果であったことを報告しています。



Cosmetic and shoulder functional outcomes in posterolateral minithoracotomy atrial septal defect closure: A retrospective study : Noriyoshi Ebuoka MD | Hidetsugu Asai MD, PhD | Junichi ObaMD, PhD | Tsuyoshi Tachibana MD, PhD ; J Card Surg. 2022;1–6.
ⅱ)大動脈弓再建の際におけるfemoral 送血:大動脈弓部の再建が必要な手術において術中に下半身の血流を確保するため、以前は下行大動脈に直接カニューレを挿入していた。最近では新潟大学からの報告を参考にし大腿部の動脈を穿刺で確保し手術時間の短縮・手術侵襲の軽減が得られたという報告をしています。

Femoral Arterial Cannulation for Aortic Arch Repair in Neonates and Infants : 北海道立子ども総合医療・療育センター心臓血管外科 ○夷岡徳彦、浅井英嗣、大場淳一 ; 第58回日本小児循環器学会にて発表
ⅲ)小児ECMO:心臓手術術後や心筋炎の罹患により急激に心機能が低下した患者様に自己心肺の代替え機械としてECMO(人工心肺)を使用することがあります。最近では胸を開ける事(開胸)なく低体重(当科の経験では最低体重2.6kg)の患者様にも頸部や大腿部より管を挿入することでECMOを確立するようにして良好な結果を出しており近日報告予定です。

②近年の難手術成功例
ⅰ)自己肺動脈弁形成術:ファロー四徴症は根治術後の遠隔期(多くは10年以降)に肺動脈弁逆流の為、肺動脈弁への再介入手術を要することがあります。当科ではこのような患者様に心膜を用いた形成術を施行し良好な結果を得ています。

ⅱ)川崎病後の冠動脈狭窄に対するバイパス手術:川崎病は広く知られた風邪に似た疾患ですが、罹患後に心臓に栄養する血管(冠動脈)が狭窄し心機能の低下や命を脅かす状態になることがごく稀ですがあります。このような患者様に成人で行われるのと同じ冠動脈バイパス術を施行し良好な結果を得ています。

③当科から報告された新しい手術方法
ⅰ)大血管転移症・冠動脈移植困難例に対する手術の工夫:大血管転移症は新生児期に手術介入が必要な重症心疾患です。この疾患に対する手術の特徴は心臓に栄養を与える冠動脈の移植をしなければならないという事にありますが、冠動脈の走行は多種多様です。当科では移植が困難な走行をしている冠動脈に対して手術の工夫を行うことで救命する事が出来たため報告しています。

Tubular Pouch Technique Using Aortic Tissues for Single Coronary Artery Transfer : Yosuke Arai, MD, Hidetsugu Asai, MD, PhD, Noriyoshi Ebuoka, MD, Junichi Oba, MD, PhD, and Tsuyoshi Tachibana, MD, PhD ; Ann Thoracic Surg. 2022.e1-3.
ⅱ)大動脈弓離断症・脳血流確保困難例に対する手術の工夫:大動脈離断症は新生児期に手術介入が必要な重症疾患ですが、脳に血流供給する血管を術中に遮断しなくてはならず、脳血流供給が不安定になる場合があります。当科ではこのような患者様に対する手術に工夫を加えることで救命し報告しています。

Aberrant Subclavian Artery Bypass for Cerebral Perfusion in Aortic Arch Reconstruction : Noriyoshi Ebuoka, MD, Hidetsugu Asai, MD, PhD, Junichi Ooba, MD, PhD, and Tsuyoshi Tachibana, MD, PhD ; Ann Thoracic Surg. 2022.e1-3.
業績
当科では全道より単純心疾患から複雑心疾患、単心室症まで幅広い心疾患の患者様が集まるため疾患の偏りがない事、手術全体数に比して新生児期に手術介入が必要な患者様が多いという特徴があります。


ご連絡
心臓血管外科の見学・研修を希望される医療従事者の方は下記までご連絡ください。
担当者:浅井英嗣
連絡先:hidejansson@yahoo.co.jp