赤ちゃんの頭のかたち外来

日常診療ではしばしば、「頭の形がゆがんでいるのではないか」と心配して来院される方がいます。世の中には確かに、頭の形が変形し脳機能の発達にも悪影響が出てしまう「頭蓋骨縫合早期癒合症」という病気がありますので、心配になるお気持ちに共感します。しかし、幸いにも、来院されるほとんどの方は病気(頭蓋骨縫合早期癒合症)ではなく、位置的頭蓋変形という病気ではない状態です。

位置的頭蓋変形とは、赤ちゃんがいつも同じ方向を向いて寝ることや、母親のお腹の中でのさまざまな要因(多胎妊娠など)で、後頭部が平らになったり非対称になったりする状態です。この状態は病気ではなく、脳機能の発達に影響が出ることは基本的にありません。変形が軽い場合は、赤ちゃんが自分で寝返りするようになると自然に治ることが期待できます。寝返りするようになる前は、頭部の向きを工夫したり、見守りの下うつ伏せの時間を増やしたりすることで改善が見込めます。

しかしながら、変形が強くなった場合には、耳やおでこ、目、頬、あごの位置もずれることがあります。このような場合、先ほど述べた方法だけでは治らないことがあります。こうしたケースでは、ヘルメットを使った矯正治療が効果的であることがわかっています。海外では1900年代から、日本では2012年から保険外の診療として行われており、効果を示す研究もあります。

当院はこれまで、保険が使えないヘルメット治療については行っていませんでした。しかし、以下の理由で、ヘルメット治療を導入しました。
  1. 病気ではなくても、変形改善のためヘルメット治療を希望される方がいます。その場合、本州の病院を紹介してきましたが、通院が難しいという訴えもあり、対応すべきと判断しました。
  2. 位置的頭蓋変形の診療であっても、頭蓋骨縫合早期癒合症の診断や治療を行っている施設が行うことは、病気を見逃さない点で有利と考えました。

まずは赤ちゃんの頭のかたちのゆがみが病気によるものか、病気でないものか適切な頭蓋健診を受けることが必要です。

病的頭蓋変形(頭蓋骨縫合早期癒合症)について

赤ちゃんの頭蓋骨は成人と異なり、いくつかの骨に分かれています。10歳過ぎに成人のように一体化します。小児期は脳が急速に成長するため、頭蓋骨も脳の成長に合わせて拡大する必要があり、このような仕組みになっています。骨と骨が早期に癒合してしまうと、脳の成長が妨げられてしまい、外見も変形します。これを頭蓋骨縫合早期癒合症と呼びます。
頭蓋骨の変形や、脳機能の発達遅滞を避けるためには、早期に適切な診断と治療を受ける必要があります。
タイプによっては、顔面骨の異常、手足の骨の異常を伴うものもあります。

位置的頭蓋変形について

生まれて間もないころに同じ方向を向いて寝ることや、妊娠中のさまざまな要因(多胎妊娠など)により、頭蓋にゆがみが生じる状態です。この状態は病気ではなく、脳機能の発達に影響が出ることは基本的にありません。位置的頭蓋変形のゆがみについては形に応じて「斜頭症」「短頭症」「長頭症」の3つに分けられます。

斜頭症

斜頭症(しゃとうしょう)は、後頭部が斜めにゆがんでしまい、左右非対称になっている状態です。主な原因は、向きぐせや胎児期の子宮内環境による後頭部への圧力とされています。ゆがみが進行すると耳の位置や顔面が左右非対称になってしまうこともあります。そのような場合には、治療が必要になることもあります。
斜頭症

短頭症(絶壁頭)

短頭症(たんとうしょう)は、後頭部が丸くならず平坦になってしまう状態です。一般的に絶壁とも呼ばれます。主な原因は、赤ちゃんが仰向けに寝ることで後頭部に圧力がかかることによるとされています。
短頭症(絶壁頭)

長頭症

長頭症(ちょうとうしょう)は、頭部が通常より縦に長く伸び、後頭部が著しく突き出ている状態です。主な原因は、横向きに寝ることによって側頭部に圧力がかかることとされています。長頭症は、病気による変形の特徴と似ているため、注意が必要です。
長頭症

頭のゆがみの予防方法

赤ちゃんの頭のゆがみ度合いを大きくしないために、家庭でできる予防方法があります。

寝かせる向きの工夫

できるだけ同じ方向を向かせないように配慮することで、片方の後頭部に圧力が長時間集中しないようにします。
例えば
  • 授乳のたびに頭と足の位置を交互に入れ替えて寝かせる(人など、興味のある方へ向きがちなため)。
  • 両親が話しかける方向を変える。
まずは、寝ている赤ちゃんの顔の向きを観察してみましょう。

タミータイム

タミータイムは首座りの練習やうつ伏せ練習の方法として用いられますが、頭のゆがみを予防する方法としても有効です。
うつ伏せになることで頭にかかる圧力を防げます。
分娩施設から自宅に戻ったら、1日2.3回、3〜5分くらいからはじめてください。
保護者の監視下で、おむつ替えの直後や、目が覚めた後に行いましょう。
※ 顔を動かすことのできない時期のうつ伏せ寝は窒息の恐れがありますので注意が必要です。寝かせる際は仰向けにしましょう。

ヘルメット治療

頭のゆがみが重度の場合は、上記のような方法での改善は難しくなります。このような場合、頭蓋矯正ヘルメットが有効であることがわかっています。

ヘルメット治療の要点

  • 頭蓋骨の出っ張り部分に対し、それ以上突出しないように制限をかけます(負荷をかけて押し戻すのではありません)。これによって、現在へこんでいる部分の成長を誘導します。このような治療の仕組みであることから、治療は頭蓋骨が柔軟な時期に限られます。
  • 治療開始時期は生後2~7か月で、おおよそ6か月間ヘルメットを装着します。
  • 変形の改善効果は生後4か月未満が高く、生後9か月以降はかなり低下します。
  • ヘルメット治療では「治療開始後のサポート」が重要です。赤ちゃん一人ひとりの成長や治療の進み具合を見極め、適切なメンテナンスを行うために、医師とメーカーの協同が不可欠です。
  • メーカーの豊富なノウハウやデータにより、正確な診療が実現されます。
  • ヘルメット治療

頭蓋矯正ヘルメット

当院ではジャパン・メディカル・カンパニー日本製ヘルメットを用いて治療します。
最先端3Dプリンタによる、強度と軽さを両立したヘルメットは、赤ちゃん一人ひとりに合わせた完全オーダーメイドで、日本人の骨格や、高温多湿な日本の気候を踏まえて設計されています。
15,000症例以上の経験を有するジャパン・メディカル・カンパニーのスタッフが常駐し、安心安全な医療サービスの提供をしています。

Qurum Fit(クルムフィット)

強度がありながらも非常に軽く、首が座っていない低月齢のお子様から装着できます。
ヘルメット本体はもちろん、クッションの水洗いも可能で、清潔な状態が保てます。
赤ちゃんの頭蓋矯正ヘルメット

治療費について

病的変形かどうかの診断まで保険診療で行います。ヘルメット治療は自費診療になります。※当院のヘルメットは医療費控除の対象となります。
自費診療分は、ヘルメット作製費と全診療費を合わせ、550,000円(税込)です。

ヘルメット治療の流れ

Step1 レントゲン検査

病的な頭蓋変形(頭蓋骨縫合早期癒合症)でないか確認します。

Step2 適応診断

診察では、視診・触診を通して、変形の診断と重症度(レベル1~4)を判定し、診察時の月齢を考慮した上でヘルメット治療の適応を判断します。

Step3 3Dスキャンによる頭部の撮影

3D画像撮影解析装置(VECTRA H2)を用いて、お子さまの頭部を上部・前後左右から2~3回ずつ撮影します。

Step4 ヘルメット作成

3Dスキャナー撮影データをもとに、現在の変形した形から、矯正後の最終的な頭の形を想定したオーダーメイドのヘルメットを作成します。

Step5 治療スタート

治療申し込みから約2週間でヘルメットが届き、装着開始します。基本的には入浴以外の1日23時間、6ヶ月前後の装着を推奨しています(個人によって期間が異なります)。

Step6 定期的な診察

約4週間ごとに診察します。ヘルメットの装着状況や矯正状況、頭の成長状態を確認し、ヘルメットの再調整を行います。治療終了時に3Dスキャン検査を行います。

Step7 治療終了

治療の終了は、頭蓋変形の改善度、頭蓋成長の度合い、装着時間の状況などを基に判断します。

ヘルメット治療による効果(実例のスキャンデータ)

月齢が早く、装着時間が長いほど改善効果が期待できます。
※ 開始した月齢や、装着時間、成長の速度によって個人差があります。
ヘルメット治療効果例

診療受付

初診

毎週 月曜日(午前)
毎週 火曜日(午前・午後)
毎週 金曜日(午前・午後)

初診

再診

毎週 金曜日(午前・午後)

再診

担当医師の紹介

吉藤 和久 小児脳神経外科(北海道立子ども総合医療・療育センター 外科部長)

坂本好昭先生
【所属・認定資格】
日本脳神経外科学会専門医
日本小児神経外科学会認定医
日本脊髄外科学会認定医
脊椎脊髄外科専門医
日本小児神経外科学会評議員
日本二分脊椎研究会世話人
日本こども病院神経外科医会役員

【赤ちゃんの頭のかたち外来開設にあたって、吉藤医師よりコメント】


Q. ヘルメット治療を始めた経緯
病的ではない位置的頭蓋変形であっても、一部ではありますが、自然軽快や日常ケアによる改善が望めない程度に進んだ例が見られます。そのような状況では、ヘルメット治療を望まれる場合があります。これまでは他施設(本州の施設)をご紹介してきましたが、地元でも対応できる体制を整えるべきと考えました。

Q. 診察の際に心掛けていること
病的な変形、つまり頭蓋骨縫合早期癒合症との鑑別をしっかり行うことに心がけています。

Q. 悩んでいる親御様へのメッセージ
まずは受診していただき、疑問に思われる点をご質問ください。診察の上、ご説明します。なお、ヘルメット治療が選択肢となる場合はそのように情報提供しますが、ヘルメット治療をこちらから勧めることはありません。自由な意思決定を尊重します。

在原 正泰 小児脳神経外科

在原正泰先生
【所属・認定資格】
日本脳神経外科学会専門医
日本小児神経外科学会認定医
ヘルメット治療について相談したい方は、当院が導入しているヘルメット「Qurum Fit」のメーカーが運営する「赤ちゃんの頭のかたち相談室」に無料でご相談いただけます。

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